三毛猫

オスの三毛猫が非常に珍しいのは有名な話ですよね。その珍しさから船乗りの間では「オスの三毛猫を船に乗せると福を呼び船が遭難しない」という古い言い伝えがあったり、商売繁盛の招き猫もその希少性から縁起が良いとされ三毛猫がモデルになることが多かったり。しかし、なぜ三毛猫のオスは珍しいのでしょうか?今回のトピックスではその理由を探ってみました。

中学の理科で「遺伝」の勉強をした記憶はありますか?「エンドウの丸い種子の純系としわの種子の純系をかけあわせてできた子はすべて丸い種子になった。さらに子を自家受粉させてできた孫は丸い種子としわのある種子が3:1の割合で現れた」という実験や、人間のABO式血液型などを勉強したと思います。

今回はその遺伝のお話なのですが、中でも特に性別を左右する「性染色体」がポイントになりますので、まずは簡単に復讐しましょう。人間の染色体数は常染色体22対、性染色体1対、計23対46本になります。性別を決定する遺伝子はその中の性染色体1対で「XX」だと女、「XY」だと男になります。猫は常染色体18対、性染色体1対、計19対38本の染色体を持っています。常染色体の数は人間と異なりますが、人間と同じく性別を決定する遺伝子はその中の性染色体1対で「XX」だとメス、「XY」だとオスになります。

XXでメス。XYでオス

さて、ここからが猫の毛色を決定する遺伝子についての解説になります。非常に複雑ですので、簡略化したモデルにして説明していきます。
毛色を決定する遺伝子は全部で9種類あると言われていますが、そのうち白や黒などの毛色を決定する8種類の遺伝子は常染色体上に存在しています。しかし、茶色を決定する遺伝子だけは性染色体の「X」染色体上にしかありません。この茶色を決定する遺伝子には、「黒毛を茶毛に変更する遺伝子を持つX染色体」と「黒毛を茶毛に変更しない遺伝子を持つX染色体」の2種類があり、この2種類の作用によって毛色に茶色が含まれるかどうかが決定されます。これを「伴性遺伝」といいます。またY染色体は毛色と関係していません。

🔸 メス「XX」の場合
X染色体2本が「黒毛を茶毛に変更する遺伝子を持つ」場合、X染色体2本が「黒毛を茶毛に変更しない遺伝子を持つ」場合、そしてX染色体2本がそれぞれ1本ずつ「黒毛を茶毛に変更する遺伝子と黒毛を茶毛に変更しない遺伝子を持つ」場合の3タイプがあります。この最後のタイプが茶毛と黒毛の両方を持つ三毛猫になります。(白を含まない場合にはサビ柄やべっこう柄になる。)

🔸 オス「XY」の場合
Y染色体は毛色に関係しないため、X染色体が「黒毛を茶毛に変更する遺伝子を持つ」場合か「黒毛を茶毛に変更しない遺伝子を持つ」場合の2タイプしか存在し得ません。

従って、通常の場合において黒毛と茶毛の両方を持つオスの三毛猫やサビ猫は存在し得ないことになります。

しかし、ある特殊な場合にのみオスの三毛猫が誕生します。それはクラインフェルター症候群という染色体異常の場合です。クラインフェルター症候群は、通常よりもX染色体が多い状態、つまり「XXY」のような状態を指します。この場合、Y染色体の他にX染色体が2つあるため、オスでも「黒毛を茶毛に変更する遺伝子」と「黒毛を茶毛に変更しない遺伝子」の両方を有する可能性があるのです。この染色体異常で三毛猫が誕生する確率が3万分の1と推定されているため、オスの三毛猫が非常に珍しいとされているんですね。

オスの三毛猫が非常に珍しい理由がおわかりいただけたでしょうか?少し難しかったですかね。今回はモデルを簡略化するために細かい話を飛ばしたり、三毛猫が誕生する原因もその割合が大きいクラインフェルター症候群のみに絞っていますので、さらに詳しく知りたい方は専門書等で調べてみてください。

kei

この記事を書いている人: KEI
外部ライターのKEIです。飼っている猫はタマ(♀ 15歳)。世界中で撮影した猫の写真や、話題になった猫関連のトピックスなどを紹介していきます。

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