皆さん、オスカーという猫を知っていますか?
オスカーは、2005年にアニマルシェルターで生まれた男の子です。
2歳の時に、アメリカのロードアイランド州にある、重度の認知症やパーキンソン病等の患者さんをケアするホスピス、the Steere House Nursing and Rehabilitation Center(ステアーハウス看護リハビリテーションセンター)が、患者さんへのセラピーの為にオスカーを引き取りました。
このホスピスはペットセラピーを重視しており、施設のいたるところにペットがいて、オスカーは6匹いる猫の内の1匹です。オスカーは重度の認知症患者さんがいるフロアで生活していました。
オスカーがホスピスに来て約6か月後、オスカーが医師や看護師と同じように、病室の前を巡回していることに、スタッフが気が付きました。
彼は、患者のにおいを嗅いで観察し、数時間以内に亡くなる患者さんのそばで座っているようなのです。通常、オスカーが寄り添ってから、患者さんは4時間未満で旅立つそうです。
末期疾患ケアの専門家である、ブラウン大学のDavid Dosa博士は、オスカーが13回目の寄り添いをした時に、オスカーの能力に確信を持ちました。
その日、Dosa博士は、ある患者さんが食事をとらず、呼吸も乱れ、足が青みを帯びており、その方の死が近いことを意味する兆候に気が付きました。肝心のオスカーはというと、その患者さんの部屋に留まらず、フラフラと巡回していました。Dosa博士は『彼の能力も当てにならないのだな』と思っていました。
しかし、後に看護師から、その患者さんの最後の2時間の間、オスカーがベッドサイドで寄り添っていたと伝えられました。医師はこの患者さんが旅立つ時間を、オスカーよりもおよそ10時間早く予測していたのですが、オスカーはその時がくる2時間前に側に来たそうです。
オスカーのこの行動を観察しはじめて25件目、彼の死を察知する正確さを確信したスタッフは、オスカーが寄り添った患者さんの家族に電話をかけるようになりました。
オスカーについて書かれたDosa博士の著書『Making rounds with Oscar: the extraordinary gift of an ordinary cat』ではオスカーの行動について確固たる科学的な説明は提供されませんが、「ガンのにおいをかぐことができるとされる犬のように、オスカーは細胞が死ぬときの独特なにおいを発するケトンをかぎわけることができるのではないか」と示唆されています。
死を予知する猫というと、不吉な感じや、不安に思う事があるかもしれませんが、患者さんの家族や友人はオスカーを不気味がることはなく、患者の最期にオスカーが側に居てくれることに感謝し、称賛するそうです。
「人々は、大切な人が息を引き取る時にオスカーがそこに居ること、自分がその場に居られなかったとしても、オスカーがそこに居てくれたということに大きな慰めを見いだしています」とDosa博士は語っています。
普段、オスカーは特定の人の側にずっといないのですが、寿命を全うしようとする患者さんの側で、『頑張りましたね、側で見届けますよ』と言っているのかもしれませんね。